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岡本太郎 2 - アトリエ

  • 執筆者の写真: Maki Ikehata
    Maki Ikehata
  • 2024年12月18日
  • 読了時間: 3分

更新日:2月4日

 仕事の後、青山で後輩と待ち合わせして、岡本太郎記念館へ向かった。 

 東京に引っ越して来てから16年。これまで何度かこの近くまで足を運びながら、結局引き返してしまったことがあった。まだアトリエに入る勇気がない、その理由を「岡本太郎の生き方そのものを理解できていない」といった言い訳で片付けていたのだ。

 しかし、なんてことはない。入ってみれば生き方が少しずつ分かるものだ。

 

 「ようやく来たね」と言っているように迎えてくれる太陽の塔。


 静かな高揚感を抱えながら、アトリエに足を踏み入れた。庭は最後に見ることにし、まずは階段を上がって2階の作品を鑑賞することにした。自分には、つい絵に近づきすぎてしまう癖がある。そこで、一度近づいた後、必ず離れて全体を眺めるよう意識してみた。実物を目の当たりにすると、その迫力に圧倒される。「ギャラリーに飾られた絵画」といった形式的な表現では到底語れない。ここは創造のエネルギーが凝縮された「生きた空間」であり、色彩と形の洪水に飲み込まれるような感覚を覚えるのだった。

 

 そして1階へ降りる。そこには作業机、所狭しと立てかけられたキャンバス、そしてピアノがあった。机の上には、岡本太郎が実際に使っていた道具がそのまま残されている。それは単なる展示物というより、まるで創作の途中であるかのような活気がみなぎっていた。少し待てば岡本太郎が近所の外出先からふらりと戻ってくるのではないかと思わせるほど、その場には彼の息遣いが感じられた。



 庭に出てみる。野生のままに生い茂る植物たち。昔から身近にあった犬の彫刻と、坐ることを拒否する椅子。この自然の中で深呼吸をすると、岡本太郎が追い求めた「生命の原点」に触れる瞬間を感じる。その瞬間に自分の中に眠っている野生的なエネルギーや、本能的な感情が呼び覚まされるようだった。岡本太郎が追求した、ただの美しさではない、人間の奥底にある「生の爆発」。その純粋さに触れると、これまでの自分の生き方や価値観を見つめ直したい衝動に駆られる。

 

 このアトリエは、岡本太郎作品が好きな人だけでなく、人生に新たなエネルギーを求める人にとっての聖地のようだ。特別に新たなエネルギーを求めていなくても、自然とエネルギーが補給されていくのを感じられるのではないだろうか。訪れた後には、きっと心の奥底に小さな爆発を抱えて帰ることになるだろう。その火花が、自身が持つ創造力や生きる原動力へとつながることを、強く信じずにはいられない。

 

 今日の私は、大きな決断をして間もない時期であり、さらに先週の旅行先から戻った途端に風邪をひき、病み上がりの本調子とはいえない状態だった。決してエネルギーにあふれているわけではなかったが、平日午後に突然にもかかわらず岡本太郎アトリエにに付き合ってくれた後輩には心から感謝している。 

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